８年生〜10年生の体育に関する困難を検討し、学校における"スポーツ・フォー・オール"哲学の限界を認め、ニュージーランド文化における重要な一部分としてのスポーツ（教育省, 1987）を認めた上で、多くのプログラムは、明らかに、その潜在性の高さほど効果的ではなかった。さらにスポーツの中の子供や、スポーツが体育カリキュラムの一部たりえるかどうかなどといった点について説明のない多くの誇張があった。進行中の話し合いには興味を示したかも知れないが、それは信念と将来への展望に基礎づいており、スポーツを教えることに関する研究によっては今日まで光をあてられていなかった。その上スポーツのスキルが体育の中で教えられるとき、それらはしばしばスポーツの内容とは似つかない方法が適用された。このような理由から、スポーツ・エデュケーションのコンセプトを仮説以上の手段で探求するのは合理的と言えた。

　1991年、10年生の体育プログラムの一部としてスポーツ・エデュケーション・カリキュラム・モデル（Siedentop, 1986）を取り込むことの意義を検討するため、合同の研究プロジェクトがデザインされた。カリキュラム・モデルは６つの主要な特徴を持っていた。

１．スポーツ・エデュケーションは短期間の指導ユニットの代わりにシーズンを採用す
　　る。このことは生徒達が典型的な体育の指導の単位より長い期間活動に取り組むこ
　　とを意味する。
２．生徒達はチームのメンバーになり、シーズンを通してこれらのグループに留まる。
　　チームはクラスの"スポーツ委員"によって選ばれ、できるだけ平等な競技になる
　　よう、釣り合いのとれたものにするべきである。
３．シーズンは練習期間、プレシーズン・ゲーム、公式試合などによって構成される。
４．シーズンはすべての参加者を巻き込んで行われるイベントによって終了する。
５．記録（特にチームに関するもの）を取って公表し、シーズン中起こっていることに
　　対して意味を付け加える。
６．生徒達はスポーツを開催するための必要な役割を学ぶ。また教員は教育係兼コーチ
　　となり役割を少なくすることによって、生徒達にプログラム中に起きたことに対す
　　る責任を移譲させる。

　過去の実践から、Graham(1988)は、多くの教員達が、大学の教授達が行っている研究のことを本質的に自分の仕事には関係ないこと考えていることを示唆した。彼はまた、合同の研究は、問題がすべてのメンバーの興味を引き、その必要性がトップから付加されるのでなく、すべての参加者に等しく価値があり、教員の取り組みについての時間とサポートが得られる時に成功すると報告している。これらの原則はプロジェクトの期間中、堅く守られた。レクリェーションとスポーツへの行政財団（The Hillary Commission）からすべての中学校に手紙が送られ、プロジェクトへの参加を検討するよう招待された。選ばれた34の学校は国の異なる地域ごとに６つのサポートグループに分けられた。全部で、86人の教員とおよそ2368人の10年生（多くはスポーツを行っていない）が14の異なったスポーツに参加した。何人かの教員はスポーツのあり方を変え（例えばチームの人数、コートの大きさ、ルール、ゲーム時間など）、シーズンに16〜22回の授業を配し、たいていの学校は週２回のスケジュールにした。教員はサービス・コースに出席することが要求され、彼ら自身の実践をモニターされ、振り返りの日誌を通して経験を共有することが要求された。

　ボランティアであるたいていの教員達は、生徒達がどのように反応するかいくらか疑い深く心配していた。これは驚くことではなかった。なぜなら、スポーツ・エデュケーション・カリキュラムの構造とプロセスは、指導方法の抜本的な変更を要求するからである。スポーツのスキルはより伝統的なマルチアクティビティの体育プログラムで教えられるのがほとんどである。取り組みは、何人かの教員にとっては彼らの信念に挑戦すること、----特に新しく議論されている現実（Sparkes, 1987）に立ち向かったときの複雑で難しいプロセス----を意味した。例えば、多くの教員は、授業時間に競技的なスポーツを行うことを体育シラバス（教育省, 1987）の哲学に反するものとして捉えていた。スポーツは優しい競争と協力（Arnold, 1988）を提供するが、何人かの教員は構造化された競争は好ましくない社会的価値を促進するだろうと心配していた。