スポーツ・エデュケーションはプレイ理論に根付いている。それは心理学や指導的観点からというより、文化的視点を強調したものである。スポーツ・エデュケーションの教育学的特徴は、指導のための理論や教育学的視点に立った実践研究の理論によって発達されたというより、多くは、私のすばらしいスポーツ経験から考案された。1980年代の初頭、スポーツ・エデュケーションが発展途上にあるとき、私は協力的学習の研究についてある程度の知識はあった。しかし実際それをスポーツ・エデュケーションに利用することは考えていなかった。スポーツ・エデュケーションを通して"生じた"ことは、私が初めてモデルに関する仕事を始めてから現れてきた数多くの理論や指導に関する潮流と関係があるということが明らかとなった。あるいは、少なくともモデルの発達途上の段階では、私はそれらについて知らなかった。

　確かにスポーツ・エデュケーションには協力的学習の要素がある。個別には説明すべき点もあるが、特にチームによるグループワークに関してはその要素がある。継続的なグループ（チーム）活動を利用することはスポーツ・エデュケーションの最も重要な特徴である。しかし私は教育的な成果を改善する継続的なグループの力を証明する、他の分野からのかなり重要な研究論文（Wynne & Walbert, 1994）には気づいていなかった。スポーツ・エデュケーションでの生徒達の作業はグループで行われた。チームとはもちろん"小さなグループ"のことである。私は最近、Elizabeth Cohen(1994a)のDesigning Groupwork: Strategies for the Heterogeneous Classroom によって最も輝かしく支持された、小さくて異質な学習グループのエフィカシー（効力感）に及ぼす影響に気づいてきた。Cohenのこの手法は、小グループの効力に関する研究だけでなく、小グループがうまく機能するようにするにはどのような特徴と配列が必要かについて分析する研究についても非常に強力な研究基盤（Cohen, 1994b）を持っていた。スポーツ・エデュケーションの主要な特徴は、チームへの所属という背景の中で生徒達が仲間から学習することである。それは明らかに"peer tutoring（仲間の指導者）"のとても良い例であり、印象的な研究の基盤を持つもう一つの有力な指導実践である。

　私は長い間 Len AlmondとRod Thorpeの仕事である"teaching games for understanding（理解のためのゲーム指導）"に影響されてきた。スポーツ・エデュケーションは孤立したスキルの発達をもたらす以上に、明らかに戦術的な気づきや能力を促進する。このように２つの手法が共通して多くを持っている。"Sport Education in Schools"（Almond, 1997）に関するLenの章には、２つのモデルの実にすばらしい調合がある。1980年代の後半に、成果に基づく教育の潮流と本物の評価法が大きな話題になったとき、スポーツ・エデュケーションが本物の教育のとても良い例であることが即座に明らかになった（Siedentop, 1996）。減らされたカリキュラム、より深く学ぶことができる、実際の世界の中で意味を持つような成果、そしてそれらの成果に絶対必要な評価などは、すべてスポーツ・エデュケーションの中に以前からあった本物の教育の特徴である。本物の教育に関する論文を読み、本物の教育とはどのようなことをいうのかについての主な隠喩として利用されるスポーツを見たことはすばらしいことだった。

　ごく最近になって、Kirk & McDonald(1998)はスポーツ・エデュケーションは状況の中の学習（situated learning）の一つの良い例だと議論し、Alexander, Taggart, & Luckman(1998)は"生徒中心の学習"をSEPEPの主要な特徴であると表現した。これらの双方が、構成主義者の理論が主流であるカリキュラムと指導に関する理論の現代的思潮の中で、スポーツ・エデュケーションの位置づけをかなり厳格に定めるのに役立つ。私はスポーツ・エデュケーションがこれらのすべての観点に良く"フィット"しているように見えることを喜んでいる。しかし、私は、スポーツ・エデュケーションが、それらのいずれかの観点をスポーツに"応用したもの"ではないということも言わなければならない。モデルはスポーツとプレイに根付いている。いつでもそうであった。教育学的特徴は主にスポーツ経験から引き出された。そして教員の有効性に関する初期の研究、特に教室経営に関する部分から引き出された。グループワークや状況の中の学習について今ではずっと多くのことを知っているという事実は、スポーツ・エデュケーションが機能する理由を説明するのに役立つ。これらの多くの手法とスポーツ・エデュケーションはいくつかの共通した要素を共有する。それらのすべては、生徒達の学習と態度を促進すると考えられるものであり、間違いなくスポーツ・エデュケーションの成功のいくつかを説明するのに役立つ。とはいえ、それはまた、効果的な教育について興味のある人達が、うまくなされたチームスポーツの経験がなぜその人達にそのような強力な影響をもたらしているのかについての研究をうまくやるだろうということも示唆している。