Journal of Physical Education, Recreation, and Dance, Vol.69, No.4, 18-20, 1998
What Is Sport Education and How Does it Work?
           Daryl Siedentop (Ohio State University)

スポーツ・エデュケーションとは何か、そしてそれはどのように機能するのか
              　　　　　　　ダリル・シーデントップ（オハイオ州立大学）

　スポーツ・エデュケーションとは、学校体育の中で男の子、女の子の如何を問わず、確実かつ教育的に貴重なスポーツ経験を提供するためにデザインされたカリキュラムと指導のモデルである（Siedentop,1994）。スポーツ・エデュケーションはカリキュラム上の重要な含みを一つ持っている。短い単位のマルチアクティビティ・プログラムに簡単にフィットすることができないと言うことである。また指導上の重要な含みも持っている。その目的が、直接的なドリル主体の指導に頼るより、直接指導の組み合わせや協力的な小グループでの活動、そして互いに教え合うことなどによって最もよく達成されるということである。

　スポーツ・エデュケーションはキーとなる６つの特徴を持っている。それはスポーツが地域や学校の諸環境の中でどのように指導されているかという観点から導き出されたものである（すなわち、より大きな文化の中にある活動の本物のあり方から導き出されている）。それはシーズン、所属、正式な競技、完結のためのイベント、記録の保持、祝祭性の６つである。

　スポーツ・エデュケーションの単位期間は典型的な体育の単位期間より２〜３倍長い。ここでの研究論的仮説は"少ないことは多いこと（less is more）" 、またはより深い内容の少ない活動の方が典型的な短期間、複数種目の授業より良い教育成果を生むということである。

　生徒達はシーズンの最初にチームのメンバーとなり、シーズンを通して所属する。生徒のチームとして計画し、練習し、競技する。この特徴も、スポーツ経験から得られる社会的意義や個人的成長の大部分がしばしば積極的なスポーツ経験に帰結するのと同じように、グループへの所属をやり通すことと深く関連づけられているということを示唆する証拠から導き出されている。

　スポーツ・シーズンはたいてい練習期間のところどころに設定された正式な競技のスケジュールによって定義される。所属と公式競技は、生徒達にとって本当に意味のある重要な結果を追求するための状況を作る計画づくりや目標設定の機会を提供することを結合する特色がある。

　あるシーズンに誰が最も優れていたかということを明らかにしたり、また他の者にとっては自分の進歩を成果として記録することはスポーツの自然なあり方である。完結のためのイベント（陸上競技の決勝やバレーボールのチャンピオンシップなど）は、プレイとスポーツの重要な特徴である達成（Siedentop,1981,1994）への祝祭と祝賀の機会を作りだす。

　記録（ゴール数、ポイント数、時間、ブロックの数、盗塁の数、アシストの数など）は個人とグループにフィードバックを与える。記録は標準を定義するのに役立ち、それは目標を定義する（ターンオーバーを減らしたり、レースでのタイムを良くしたり、総当たり戦での結果を良くしたりというように）基礎になる。記録はスポーツの伝統を部門ごとに定義するのに役立つ（幅跳びの６年生の記録、中学３年生のバスケットボール・ゲームでの最小失点記録などのように）。

　スポーツ競技は、オリンピックに関連づけられるメジャーなお祭りから高校で行われる金曜の夜のフットボール・ゲームまで、また子供のサッカーゲームに際しての家族のお祭りまで、さまざまなお祭りのための機会となる。スポーツ・エデュケーションでは、教員と生徒は、改善したことや一生懸命やったこと、そしてフェアにプレイしたことなどを祝うためのお祭りを頻繁に作り出すために、ともに働く（ポスターを作ったり、チームカラーを決めたり、選手紹介をしたり、授賞式をしたり、ビデオ撮影したりする）。

　これらの特徴のいずれもが、体育教育の中で述べられていないことに注意すべきである。その代わり、体育は、短期間の種目雑多なカリキュラムを扱うことを最も頻繁に見せている。生徒達は、しばしば、体育館に来るまで授業の中で何が起きるのか知らない。チームのメンバーは授業ごとに替わる。全体の経験は祝祭性に欠けている。

　スポーツ・エデュケーションは、しかしながら、慣習化されたスポーツのまねごとではない。３つの点で異なる。すなわち「参加への要求」と「発達上適当な競技」、「多様な役割」の経験の３点についてである。この３つは教育環境に適合させるための変更がなされたとしても、厳然と残る。

　スポーツ・エデュケーションではすべての生徒が常に何らかの活動に関わっている。この要求はチームの大きさ（小コート用のチームが標準である）や競技の性格（エリミネーション（敗者の除去）は設けないやり方）、完結のためのイベント（すべての生徒／チームが参加）、プレイ時間、ポジション・プレイ（すべての生徒は平等にプレイし、ポジション・プレイを学ぶための平等な機会が与えられる）などに影響を及ぼす。

　スポーツ・エデュケーションで使われるスポーツの形は生徒達の能力に対して発達的に適合される。成人用のゲームのやり方は使われない。変更を加えられたルールと空間、そして用具とともに行われる、小コートでのゲームが典型的である。勝つためにハードかつフェアにプレイすることが強調される一方で、スポーツ・エデュケーションの主要な「倫理」は、公正に参加することや個人またはチームのパフォーマンスを改善することに置かれる。

　スポーツ（またはたいていの体育）では、生徒達は選手としての役割だけを学ぶのに対して、スポーツ・エデュケーションでは、多様な役割を学ぶ。すべての生徒がそれぞれのスポーツについて選手、審判、記録係の役割を学習する。他のコーチやマネージャー、トレーナー、統計係、広報担当者、スポーツ委員会委員などの役割は、シーズンとスポーツの入れ替わりの時に交代させられることになる。生徒達がこの役割を責任を持って果たせるようになると、いくつかの重要な成果が達成される。生徒達が彼ら自身のスポーツ経験についてより責任を持って役割を果たすようになるにつれて、教員の管理的役割と"交通整理の指揮者"としての役割は減少する。また、生徒達は、彼らを大人のスポーツ文化についてより訓練された参加者とするための知識を身につけ、態度を発達させる。

　成功的なスポーツ・エデュケーションには、いくつか指導上の特徴がある。モデルはすべてのレベルで、すべての教員に、またすべてのスポーツに使われるというような特定の指導スタイルを必要としてはいないが、モデルが成功した際にはいくつかの類似点を示している（Carlson,1995; Grant,1992; Hastie,1996; Siedentop,1994）。それは管理上のルーチン、デューティ・チーム、仲間の教え合い、協力的な計画づくり、有効なもめ事解消システムである。